政治家や公務員の精神を根本から正す妙案
政治が「商売」になったからおかしくなった
日本の政治がこんなにおかしくなったのは、議員に給料をたんまり払ったからだと田中角栄元首相が言っていた。町会議員や市会議員にいたるまで、たっぷり給料を払ったから、政治が「商売」になってしまったということだ。商売だから彼らはやめられない。元手もかかっているし、再び当選して種銭を回収するためには何でもする。自分の信念も良心もなく、ただ「当選商売」になってしまったのは、給料を払ったせいだ。
結果、政治家の発言を誰も聞かなくなった。田中角栄元首相がいうには、昔は政治家などは「名誉職」であって、財産のある人が引き受け、損をしながらまとめ役をやっていたから、少々のことはみんなも折り合いをつけていた。それが地方自治であり国家の姿であったのに、それが商売になってしまったからうまく機能しなくなったという。ごり押しの印象が強い田中角栄さんがそういうのも不思議な気がするが・・・。
そういう「商売政治家」の中にあって、塩川正十郎元財務大臣は例外といえる。塩川さんは財務大臣だったとき、「プラン・ドゥ・シー」を標榜した。すなわち、民間企業では、計画を立てて(プラン)、実行したら(ドゥ)、もう1回それを見直しする(シー)。ところが役所は見直しをしない。プランを立てて予算を配ったら、あとはアフターケアも点検もしていない。「それはいかんから、シーをやれ」と、塩川さんは大臣として命令した。
そんなことを言っても、周囲はうまくいくわけがないと思っていた。つまり、財務省の人たちがサボるだろうと思われていた。「1、2年の辛抱だから、このくらいでお茶を濁しておけ」という態度になってしまうと思われていた。実際にそうだったようだが、でも塩川さんは穏やかに大阪弁で、「まあ、そんなこと言わんと、ちょっと10人くらい専門の担当者を置いてみたらどうだ」といった。そうすると財務省の公務員たちも5人くらいは置く。そこからレポートが出てくると「おもろいな、もうちょっとやってみたらどないやねん」となる。そして結局、20人ほどのチームができて、動き出すことになる。
これは僕の想像だが、省内で担当者は「どうせ先の長くない大臣に仕えて、シャカリキにやって仲間に嫌われてバカなヤツだ」というくらいのことは言われていたのではないかと思う。それでも、無駄遣いが250億円くらい発覚した。これを塩川さんは新聞に発表した。省内に、いろいろと理屈の通らないおかしなことがたくさんあった。明白にこれは無駄だという部分が250億円ほど出てきたのだ。
国家や社会を考えて税金制度を見直せ
旧大蔵省にいた大武健一郎さんは、主税局長、国税庁長官を歴任して、現在は商工中金副理事長を務めている。その大武さんによれば、税金というものは、ただ取ればいいというものではないという。
税金を取ることによって日本の社会はだんだん変わってきた。旧大蔵省の人たちは、金持ち征伐のためには足並みがそろっていた。金持ちからは6~9割の所得税を取ってしまえ、それが正義だ、というわけだ。長い間そういうことを続けてきた結果、せっかく才能のある人でも、お金持ちにならないように、しゃかりきに働かなくなってしまう。あるいは、外国へ行って働くようになってしまう。そういう影響がだんだん出てきた。そこは根本的に考える必要があると大武さんは言っている。
また、相続税という税金のために、家族関係がまるで変わってしまった。これもどこかで元に戻さなくちゃいけないと言う。そういう社会政策的なことまで税金でやるのがよいことなのか僕は分からない。ただ、大武さんはそんなふうに、日本国家の根本、個人主義や家族主義などに与える影響まで考えて税金を捉え、仕事をされた。さらに日米関係や日中関係にも、やはり税金の問題が絡む。中国と会議をして協定を結ぶとか、そういうことをやった官僚もちゃんといたのだ。
地方公務員には給料を払いすぎ
公務員制度改革をうまく進めるために、すばらしい答えが2つある。まず一つ目は、現在はきちんとした労働マーケットがあって、値段がついて動いていくから、昔とは違うということ。公務員法ができたのは戦後すぐだから、そのころは労働マーケットなどは成立していなかった。学校を卒業して就職したら、あとは終身雇用が常識だった。でも今は労働マーケットがある。それを考えると、理屈がどうであろうと、公務員に対して長く給料を払いすぎている。それから、仕事が楽なのを放っておいている。仕事が楽で払いすぎな状態を長く続けているわけだから、必ず「うちの息子を、うちの娘を採用してくれ」とやって来る。そこで、逆に給料をあまりケチると、優秀な人から辞めていく。
地方の市役所などに行くと、確かにみんなコネだらけだと実感するはずだ。「コネだらけ」というのは結局、仕事が楽で給料がいいからなのだ。逆に、中央省庁はどんどん人が辞めていく。「これは」と思う人はどんどん辞めていく。端的な例を挙げると、外国へ留学させた優秀な人が、帰国してすぐに辞めるケースが相次いでいる。
それなら、こんな議論をする暇があったら、地方の役所へ行ってコネ採用の比率でも調査するべきだ。あるいは、優秀な人がどんどん辞めていく事情の調査でもするべきだ。これがまず、1つめの答えである。
公務員にもスト権を認めよ
もう1つは、根本的解決として公務員にもスト権をあげればいいという議論がある。これは、橋本内閣のときに首相補佐官(行政改革担当補佐官)として6大改革に尽力した水野清さんが提唱していた。
公務員でもストライキができるようにすればいい。公務員のストライキは、戦後すぐに公務員法で禁止された。当時はまだ共産党や社会党に勢いがあったから、公務員だけでもということでストは禁止された。そのかわり、給料は民間人よりも上げた。
身分法上は、クビ切りをなくした。配置転換も恐る恐るやっているのが現状だ。これらをすべて元に戻して、ストライキ自由とすればいい。そうすれば労使関係は民間と同じになるのだから、現在のような議論はしなくてよくなるんだと水野さんは言う。
スト権を与える。そのかわり、大臣官房人事課長は、思う存分の人事異動をやるし、ボーナス査定もやるし、クビにもする。処遇が不当だと思ったら労働組合をつくってストライキをやりなさいと言う。そうすれば民間の会社と同じなのだから。警察、消防、自衛隊、税務署などは別として考える必要があるが、これは名案だと僕は思う。
例えそうなったとしても、たぶんストは起こらないだろう。なぜなら今は、国民が公務員に対して気の毒だとは思わないから。1週間ストライキをしても、国民は困らないから、逆に「ここの役所はなくてもいいんだ、このままずっとストライキをしてもらって、みんなクビにするか、大幅な減員をしたほうがいい」ということになる。それが自分たちも分かるから、やらないだろう。
公務員制度改革には、こうした簡単明瞭な答えがあるのだ。
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