Saturday, March 24, 2007

日本の付加価値産業

日本人は欧米人に比べても、インド人に比べても論理的能力が高いとは思えない。むしろ論理力は弱いし、論理教育にも力を入れていない。世界で論理力が一番高いのはインド人でしょうね。99*99の計算まで覚えるインドの教育には驚かされる。コンピュータの世界はインド人にお任せという状態になってきた。
米国は、コンセプト力と世界から優秀な人を引き入れて、その論理力を使って、新しいコンセプト(基準)を作り上げるのに長けている。グーグルは世界的なコンテストを行い、その中で優秀な人に非常に高い給与を与えて、世界から人を集めている。
欧州も米国の真似をしている。ISOの基準を作り、それを商売にしている。ノウハウを積極的に文書化して無料で公開して、その資格を売るという商売をしている。このため、台湾の新幹線のように暗黙知の日本鉄道方式と明示知の欧州鉄道方式がぶつかるという問題が出る。発展途上国では欧州式しか最新技術を取り入れる方法が無い。日本ももう少し、運営方法を文書化して明示知にする必要があると思うがどうでしょうね。
中国人は、世界的なネットワークを作り上げてその情報力で、商売をする。中国本土の安い労働力を使って、世界の良い物をまねして低価格で提供する。この商売には、世界的な華人のネットワークが有効に働いている。韓国も英語力を増強する必要を認めて、英語教育に熱を入れている。
退職した日本人技術者たちが大量に中国や韓国に招かれている。このため、日本企業の最先端技術を驚くほど早く、中国・韓国企業は手に入れている。また、優秀な退職日本人技術者の新しい研究が中国・韓国で行われて、新製品が開発されようとしている。日本人が中国を強くしている。しかし、60歳以上の退職技術者を日本で雇用する場がない。このため 原子力も鉄道車両も工場生産も中国は退職日本人技術者に教えを請い、急速にその力をつけている。
日本は世界的なネットワークもなく、コンセプト力も無い。英語力を強化するでもない。その上に、日本の最先端技術を中国に日本人退職技術者を通じて、真剣に教えている。このため、日本は新しい技術を開発する必要があるし、しかし、その開発者も日本企業から退職すると中国に招かれて、開発した技術を教えることになる。
日本にあるのは、常に、こつこつと飽きもせずに仕事をまじめに長期間こなし、かつチームワークで膨大な調査や細かい仕事を仕上げる力でしょうね。1人の技術者が成果を出すのではなくて、チームで成果を出すような仕事をすれば中国は最先端には常にいけない。
長い期間を弱いコンセプト力で、やり続けられるのは、技術者相互に情報交換も密に行っていることによる。目的はシッカリしているが、結果が保証されていないのに、長期間取り組む。論理力も信用していないので、始めに予測もあまりしない。このため、予想もしない製品を作ることになる。
その一番いい例がホンダの小型航空機ですね。エンジンを羽の上に持ってくるという奇想天外な方式である。流体計算を全ての点で行って、特異点を見つけたのでした。このような特異点を見つめるのは日本人の発想しかいないでしょうね。
日本のような結果が報われない可能性がある仕事を世界の企業は認めない。しかし、日本企業はそれを認める。日本の部品産業がここまで強くなったのは、長期間で先の見えない忍耐力が必要な物性の基礎研究と開発を許しているからである。
この日本企業が得意とする忍耐力を必要とする分野、世界的な商品を生み出す分野は、生物由来のタンパク合成ではないかと見ている。林原のトレハロースがいい例である。林原はこの合成研究に20年を費やしている。2つの酵母を組み合わせて使うことで、このトレハロースをデンプンから合成した。
生物由来の仕組みは数式では表すことができないが、非常に大きな合理性を持っている。何億年前から育んだ生命の仕組みには底知れない深さがある。
この分野は、調査するのには膨大な時間と手間が必要になるし、成果も具体的には最初に示せない。このため、日本人向きな研究である。一度その成果を物にすると、他国では真似ができない。見た目では分からない仕掛けやタンパクの合成であり、かつこのタンパク合成に必要なバクチリア・酵母の最適環境が重要なことになり、そのノウハウはそう簡単に真似できる物ではない。
今、エタノールを作るのには、サトウキビやトウモロコシなどの食材が使われているが、これが木くずや草などからできれば食材と競合しないことになる。しかし、木や草にはセルロースが大量に含まれている。このセルロースを分解できないことが問題である。
しかし、このセルロースを分化する虫がいる。それはシロアリで、このセルロースを分解しているのが、腸に寄生しているバクテリアで、このバクテリアを培養すれば、木屑からデンプンが出来ることになる。そのデンプンをエタノール化するのは既知の発酵菌でできる。
このように生物由来の有効な成分や分解方法が沢山ある。この分野を日本企業が積極的に研究開発すると、これは次の産業革命になるように感じる。すべてが地道な研究の積み上げであり、短期的な業績のUPにならないことだけは確かで、日本企業しかできないことになる。そして、この分野は奈良時代から続く発酵技術や江戸時代の本草学の流れであり、歴史の資産を日本は持っている。
また、この生物研究は、地方特有の有効生物を研究することで地方の活性化が可能になる。山形大学で周囲の温度がマイナス5度時に花の中は20度もある早春に花の咲く座禅草の研究に注目している。まず、座禅草の外と内の温度差を薄い花弁で遮蔽している。この花弁の構造タンパクを断熱材にすれば大きな効果がある可能性があるし、座禅草の高温を出す仕組みが分かれば、それを発熱体として、その仕組みを利用できる。

Monday, March 19, 2007

日本の技術、欧米中の技術

日本企業が技術力で優位に立っている。その優位を確立するやり方が、こつこつと一歩一歩確実に、しかし地道に進むことで成り立っている。論理というより感覚に近い神経を研ぎ澄ましているのが、日本の技術力の根底にある。論理性ではインドや欧米に勝てない。そして10年、20年のオーダーで技術を磨き、その技術を使った部品や製品にしている。このため、古い職人的な企業が生き延びる。
これに対して、欧米中での企業は論理で新しいサービスや物を作り、それを核に急速に企業を大きくしている。パラダイムシフト的な全く新しい考えが出てくることが多い。しかし、その後、それが改善され、製品が良くなって行くかというと違い、また新しい概念のサービスや物が違う企業から出てきて、前の物やサービスを駆逐するという展開になる。コンセプト競争になる。
日本企業は概して大きな企業が新しいサービスを構築するが、欧米では新興企業が新しいサービスを構築する。日本でも欧米のようなベンチャー企業の隆盛を望んだが、それはどうも無理であるようだ。ソフトバンクの孫さん、楽天の三木谷さんなど、成功と呼べる物は数えるほどしかない。
大企業から分社した「ルネサンス・テクノロジ」「エルピーダ・メモリ」の方が話題性がある。
このように、どうも日本人の気質はこつこつと技術を改良するのに適しているようである。どうもこれは昔からのような気がする。
事例1:中国の景徳鎮で陶器が出来た。この景徳鎮が元軍に破壊された時に、その陶工が日本に亡命した所から、日本にも陶芸ができたが、陶工の多くが朝鮮に逃げたために、その朝鮮に攻め入った豊臣秀吉軍に連れられて日本に来た陶芸家が日本で有田焼(伊万里焼)を作り、欧州に輸出した。陶工は日本では大事にされたので朝鮮時代より日本の方が居心地がいいので、仕事に専念でき、柿右衛門の赤を作り出すことになる。日本は技術がなかったことで、技術を大切にするトップがいた。
事例2:イトーヨーカ堂がコンビニエンスストアーを日本に入れるためにセブンイレブンと交渉して、販売権とそのマニュアルを手に入れたが、日本では使い物にならなくて、1から作ったという。そして、米国のセブンイレブンが赤字で倒産寸前になった時に、イトーヨーカ堂は日本のビジネスを守るために、米国のセブンイレブンを買うことになる。アイデアは米国生まれで、その店舗運営は日本ということになっている。
この事例だけではなく、液晶テレビ、ビデオも発見は米国ですが、それを製品化して、リーズナブルな価格にする地道な努力は日本がしている。一度製品化して、キーデバイスができると、それを日本から買って、台湾、韓国、中国は同じ物を低価格で作り始める。
部品開発には、地道な努力が長い期間必要なので、どうしても歴史のある体力を持った、しかし、目立たない会社が部品産業に乗り出してくる。ベンチャーではできない。アイデアの発見は米国であるので、大手企業がそのアイデアを日本に持ち帰るが、そのアイデアを落とし込む部品レベルになると、技術力を持った企業しかできない。
このため、米国は起業家が新しいアイデアを持って、そのビジネスに投資してくれる投資家が必要であるが、日本は企業が企業内で投資して、新しい部品を作っている。このように、日本と米国の投資に対する考え方が違っている原因にもなっているようだ。
日本は古いアイデアにしがみ付いていると、欧米中から新しいアイデアを持ち出されて、失敗することになる場合がある。これは気をつける必要はあるが、日本企業も変わり身が早くなっている。
価値観競争の行方は、どうなりますか??

石油の変調

ガワール油田は今から約60年くらい前に発見されたもので、今でも世界最大の一日当たり450万バーレルの生産量を誇っている。ガワール油田だけで、世界最大の産油国サウジアラビアの石油生産の6割をも生産している突出した大油田だ。この産油量が減少している。サウジの他の油田をフル動員しても、このガワール油田の減産分を取り戻していない。
「オイルピーク」論があるが、サウジではとうとうオイルの生産ピークから減産になったということである。地球物理学からサウジのペルシャ湾からウラル山脈にいたる地域が産油地域であるが、ガワール油田に匹敵する油田はない。この地域以外でもこのような大きな油田は見つかっていない。
このため、イラク石油の生産が急務になっている。カスピ海の石油も同様である。イランの石油生産はここも減産になっているようであり、イラクとカスピ海に期待が掛けられることになる。このため、カスピ海に面した天然ガス産出国のトルクメニスタンのニヤゾフ前大統領の葬儀には世界からの弔問客が来ていたようだ。
イラク石油増産のためにもイラク戦争を早期に終わらせる必要が出ている。このため、米国はイラン、シリアと同席して、イラク平和会議を開催したのだ。石油生産を順調に再開するのはどうしても治安の安定が不可欠である。
もう1つ、スリーマイル島原発事故で建設を中止していた米国が30年ぶりで原子力発電所の建設を再開する。しかし、現時点で原子力発電所の設備を製造できるのは、日本とフランスのアルパしかない。
そして、日本の日立はGEと、東芝はWHと協力して市場を開拓しているが、30年前の方式の原子力発電所である。三菱は独自開発の新原子力発電所設備を開発した。これを持って世界市場に登場している。これも石油の枯渇が見えてきて、米国も三菱の原発を準備し始めている。
米国の発電所は石炭火力発電所が総電力量の60%にも達している。これは中西部にある露天堀の炭田から安価な石炭が大量に産出するからであるが、とうとう米国でも温暖化ガス問題がクローズアップしてきて、石炭火力発電所を新設できなくなっている。
世界最大の石炭産出国はお隣、中国ですがここでも原子力発電所を作り始めている。中国は世界最大の消費国でもあり、石炭不足を起こす可能性があるためだ。
日本は石油の90%以上を中東のペルシャ湾の石油に依存しているが、とうとうその見直しを迫られている。サウジのガワール油田が枯渇するということはその周辺油田の寿命もそう遠くない。すると、どうしてもロシアからの石油輸入を視野に入れた対応が必要になってくると思うがどうでしょうね??

東大の「産業総論」で露呈 日本人の知力崩壊が始まった

私はこの10年来、東大工学部の「産業総論」というオムニバス授業の1コマを受け持っている。この授業は、さまざまの産業界の現場にいる人が入れ代り立ち代り登場しては、それぞれの産業界の現状と未来について語るという授業で、私の担当は、日本のメディア・ジャーナリズム界についてである。授業の評価は、「どの産業界についてでもよいから、その未来について思うところを述べよ」という課題でなされる。プログラミングコンテストで勝てない日本オムニバスだから、基本的評価は学科の担当教官にお願いして、優秀な答案だけ読ませてもらった。低レベルの答案は読むだけ時間のムダだが、優秀な答案は、学生のものでもなかなか考えさせる内容を含んでいて面白いのである。今回は、計数工学科のT・S君の答案を読んでいて、ウーンと考えこんでしまった。彼はプログラミングが好きで国内外のプログラミング・コンテストによく出たりしている。その経験からいって、日本の情報産業に未来はないとしか思えないという。プログラミング・コンテストでは、ACM/ICPCという大学対抗戦が世界で最も有名なコンテストで、国内戦では毎年200チームが参加するが、そのうちまともなプログラミングが書けて、実質的な競争に参加できるのは、上位10チームぐらいで、あとの190チームはワンランク下で、まともな競争相手にならない。そういうプロセスを経て、情報に強い優秀な人材はいまどんどん外資系企業に引き抜かれつつある。今年、東大の情報系のいちばん優秀な人材が集まっている情報科学科の修士課程卒業生のトップグループはドサッとまとめてグーグルに抜かれてしまったという。あのNHKのドキュメンタリーにもあったが、いまグーグルは世界中の優秀な人材をかき集めているところなのである。日本の情報産業の弱さとして、プログラミングの水準の低さがあることは前から指摘されていたが、全体の水準が低いところにもってきて、若手の優秀な人材がどんどん抜かれてしまうのだから、日本の情報産業に未来はないという結論になる。基本的な頭の働かせ方が大問題にではどうすればいいのか。T・S君は、遠まわりのようだが、日本の小中学校の数学の水準を上げるところからはじめるしかないだろう、という。プログラミングというのは、要するにアルゴリズムの記述であって、アルゴリズムとは、要するにコンピュータにやらせる計算の手順のことである。それに必要なのは高等数学の知識というより、数学的にものごとを考えられるかどうかという基本的な頭の働かせ方である。コンピュータのプログラミングの要点は、いかにすれば複雑な計算を分解して単純な計算の集積に変えてしまうかを考えるところにある。コンピュータはかけ算すら足し算の繰り返しとして計算する。そういう数学の基礎中の基礎をちゃんと理解しているかどうかが最も重要なのだ。いいかえれば小中学校時代に算数・数学の基礎をしっかりやらせるかどうかが決定的に重要なのだ。日本の国力の基礎部分が崩壊しつつあるところが、ゆとり教育のせいか、あるいはそれ以前の問題からか、いま日本の大学生の多くが小中学校レベルの算数・数学すらできないほどに基礎数学力がダウンしている。そのあたりの事情は広範な調査にもとづいて、だいぶ前から戸瀬信之、西村和雄氏らによって指摘されている(「分数のできない大学生)」「小数のできない大学生」「算数のできない大学生」「大学生の学力を診断する」)。これらの本を読んで、日本の大学生の基礎学力崩壊のデータを見ると本当にゾッとする。私は、安倍首相のとなえる復古主義的、道徳教育的、国家教育管理型「教育再生」に賛成するものでは全くないが、「ゆとり教育」のいきすぎをやめて、小中学生に基礎学力をしっかり身につけさせるという方向の教育改革には大賛成である。問題はもはや、情報産業とかプログラミングの世界の問題ではない。日本の国力の基礎部分が崩壊しつつあるという問題なのだ。小中学校レベルの算数すら十分にできない連中が大学にゆうゆうと入ってきて、その欠落を補うこともなしに、そのまま社会に送り出されてゆくというレベルの大学がゴロゴロあるという国に日本がなってしまっているというところが問題なのだ。そういう連中があと10年もすれば日本の各界で中堅的担い手として登場してくる。そんな国に未来があるわけがないではないか。ウソだと思うなら先の戸部・西村氏の4書のうち、岩波新書だからいちばん入手しやすい、「大学生の学力を診断する」を手にとって読んでいただきたい。総社会的知的レベルダウン現象に悩まされることに今年から、大学には、「ゆとり教育100%」つまり、学校に入ってから全過程ゆとり教育でやってきましたという連中が入ってくるようになって、大学の先生方をとまどわせている。「このところ大学生の質がどんどん低下するばかりと思っていたら、今年はそれに輪をかけてひどい」という声があちこちで聞かれる。彼らが大学を出て一般社会に出ていくのはあと4年後のことになる。ゆとり教育の是正措置が少しはじまりかけたとはいえ、それが効果をあらわすのは、ずっと先になる。当分の間日本は、ゆとり教育で頭がこわれた連中がまき起こす総社会的知的レベルダウン現象に悩まされつづけることになる。その間に日本という国がこわれてしまわねばいいがと最近本当に心配している。ウソだと思うなら先の戸部・西村氏の4書のうち、岩波新書だからいちばん入手しやすい、「大学生の学力を診断する」を手にとって読んでいただきたい。総社会的知的レベルダウン現象に悩まされることに今年から、大学には、「ゆとり教育100%」つまり、学校に入ってから全過程ゆとり教育でやってきましたという連中が入ってくるようになって、大学の先生方をとまどわせている。「このところ大学生の質がどんどん低下するばかりと思っていたら、今年はそれに輪をかけてひどい」という声があちこちで聞かれる。彼らが大学を出て一般社会に出ていくのはあと4年後のことになる。ゆとり教育の是正措置が少しはじまりかけたとはいえ、それが効果をあらわすのは、ずっと先になる。当分の間日本は、ゆとり教育で頭がこわれた連中がまき起こす総社会的知的レベルダウン現象に悩まされつづけることになる。その間に日本という国がこわれてしまわねばいいがと最近本当に心配している。