Saturday, September 23, 2006

タイ式クーデター

タイでクーデターが起こり、日本への影響が心配されている。この検討。          
国民が尊敬する王室を持つことが重要であると思うのは、このようなタイの平穏・無血クーデターが起きた時ですね。
韓国や中国で軍事クーデターが起きたら、政権サイドの軍と反政権サイドの軍が対立して、流血の惨事を見ないと収拾しないのが普通である。ロシアの91年8月のクーデターも赤軍が保守派と改革派に割れて、エリティンを民衆と改革派の軍が守った。ここでも一部、混乱があったが、今回のクーデターは戦闘がなく、平穏であった。
勿論、親タクシン派はライフルで武装して抵抗しようとしたが、国王がクーデターを承認したため、断念している。タクシン前首相も戒厳令を出したが、国王がクーデターを承認したために、そのまま英国に亡命したのでしょうね。
このように国王が、流血の惨事を防いでいる。流血の惨事になると、日本企業の工場が多数、進出しているので、影響も大きかったでしょうね。今でもタクシン前首相を支持するタイ国民は多数居るために、軍と民衆の激突になった可能性がある。
クーデターを起こした評議会は早期に民政に移管するというが、このまま総選挙をすると、タクシン派(タイ愛国党)が多数を占めるために、汚職の実体を徹底的に糾弾するとしている。タクシンと、その一味が選挙に出られないようにするためでしょうね。
しかし、タクシン前首相が行った農村部の国民健康保険制度、低利貸し付け制度の政策は、貧しい農民にとっては非常に有効な政策であったが、都市住民と富裕層には不満があったようだ。そして、この富裕層と軍部が国王を後ろ盾にしたクーデターを行ったように感じる。
中国もそうであるが、貧富の差を埋めないと次の国の飛躍は無い。タイも貧富の差をどう解消するのかが、今後の課題であり、貧富の差を解消する政策が必要になっている。それを都市住民と軍部も認識しないと、また、第2のタクシンが国民の支持を得ていくことになる。
このため、軍部は報道の自由や集会の自由を制限している。民主主義を否定しているために、学生たちは反発を強めている。欧米各国も懸念の声を出している。私の見解は、農民へある程度の補助金をばら撒くことは必要であると思う。日本のように補助金漬けではいけないが、ある程度の補助金はしょうがない。
ここを軍部は理解しているかどうかですね。軍人は純粋ですから、必要悪が見えない。そこが心配ですね。

Tuesday, September 19, 2006

◆漱石が95年前に指摘した「専門家の弊害」と解決法

自分の商売が次第に専門的に傾いてくる上に、生存競争のために、人一倍の仕事で済んだものが二倍三倍ないし四倍とだんだん速力を早めて遂付かなければならないから、その方だけに時間と根気を費しがちであると同時に、お隣りの事や一軒おいたお隣りの事が皆目分らなくなってしまうのであります」
 これは、夏目漱石の発言である。漱石は明治44年(1911年)の8月、明石・和歌山・堺・大阪で講演した。一連の講演内容は、『私の個人主義』(講談社学術文庫)に納められている。冒頭部分は『道楽と職業』と題された、明石における講演からの引用である。95年前の発言にもかかわらず、その通りとしか言いようがない。
 ITプロフェッショナルはITの専門家である。ただし「IT一般」の専門家というものはおらず、セキュリティの維持、オブジェクト指向による開発、Linuxまわりのサポートといったように、各領域の専門家が存在している。ITプロフェッショナルは担当領域の仕事をし、その領域の勉強を続けなければならない。
 漱石の指摘をITに当てはめてみると、ITの専門家は金融の専門家や医療の専門家のことが分からない、となる。金融や医療を支える情報システムの開発が難しいのは無理もないことと言える。さらにITの専門家同士であっても、自分の担当領域ではない「お隣りの事や一軒おいたお隣りの事」は案外分からなくなっている。
 専門領域の細分化は進む一方である。漱石は同じ講演でこう語っている。
 「現今のように各自の職業が細く深くなって知識や興味の面積が日に日に狭められて行くならば、吾人は表面上社会的共同生活を営んでいるとは申しながら、その実銘々孤立して山の中に立て籠もっていると一般で、隣り合せに居を卜(ぼく)していながら心は天涯に懸け離れて暮らしているとでも評するより外に仕方がない有様に陥って来ます。これでは相互を了解する知識も同情も起こりようがなく、せっかくかたまって生きていても内部の生活はむしろバラバラで何の連鎖もない。(中略)根ッから面白くないでしょう」
 社会生活に関する指摘だが、IT関連のプロジェクトに絞ってみても、この言葉は的を射ている。「表面上」共同プロジェクトを「営んでいる」が、ユーザー企業やIT企業から集められたプロジェクトメンバーは「銘々孤立して山の中に立て籠もって」おり、「心は天涯に懸け離れて暮らしている」。「相互を了解する知識も同情も起こりようがなく」、プロジェクトの諸活動は「バラバラで何の連鎖もない」。
 これでは情報システムの開発プロジェクトは「根ッから面白くない」。面白くないから失敗する可能性が高まる。失敗したとしても、「相互を了解する同情も起こりようがなく」、「ユーザー企業が要件をきちんと定義しないからだ」「請け負ったIT企業に業務知識が不足していた」といった言い合いになってしまいかねない。
 専門化・専門家の弊害はITに限ったことではない。社会生態学者のピーター・ドラッカーは『プロフェッショナルの条件』(ダイヤモンド社)の中で、「専門知識はそれだけでは断片にすぎない。不毛である。専門家の産出物は、ほかの専門家の産出物と統合されて初めて成果となる」、「今日の若い高学歴者のもっとも困った点は、自らの専門分野の知識で満足し、他の分野を軽視する傾向があることである」と痛烈なことを書いている。
 無論、専門化は不可避であり、専門家の専門知識は極めて重要である。その知識を発揮するためにこそ、他の専門領域を知る必要がある。ではどうすればよいか。漱石の講演からもう一カ所引用する。
 「個々介立の弊が相互の知識の欠乏と同情の稀薄から起ったとすれば、我々は自分の家業商売に逐われて日もまた足らぬ時間しか有たない身分であるにもかかわらず、その乏しい余裕を割いて一般の人を広く了解しまたこれに同情し得る程度に互の温味を醸す法を講じなければならない。それにはこういう公会堂のようなものを作って時々講演者などを聘して知識上の啓発をはかるのも便法であります」
 ITや金融や医療の専門家は、自分の専門以外の「知識上の啓発をはかる」必要がある。この指摘をまたITの領域に当てはめてみる。プロジェクトの失敗がメンバー「相互の知識の欠乏と同情の稀薄から起ったとすれば」、ITの全体像を「広く了解し」なければならない。
 

Sunday, September 17, 2006

中国の不良債権

中国の不良債権処理について、まず、中国の特殊事情がある。中国本土の工場では部品を外国企業が持ち込み、その加工をして製品にする工程のみを基本的にしていることだ。普通の国の産業は鉄から製品まで全工程を特定国でしているので、バブル崩壊や製品が売れなくても、企業はその国でかんばることになる。そして、企業が撤退すると国全体の景気が落ち込むために、企業をその国も支援するが、中国の場合は、加工のみであるので企業も簡単に中国から離れていきやすい。
中国で不良債権ができた理由は、有力政治家の子弟が経営する国営企業に無担保で無制限に貸したことと、省政府に近い企業に土地バブルが起きている土地のビル開発に資金を貸したために起こっている。
今は、年率で経済成長が10%もあり土地価格も上昇しているし、また外国企業が中国で工場を建てるなどの投資があるので、土地を外国企業に売るなど、なんとか国営企業も利息だけは払っている状態である。
しかし、そこで土地バブル崩壊が起きると、土地は不良資産化して借金を返せなくなるし、かつ外国企業の投資減退がおきると、国営企業もほとんど海外企業に負けているので、海外企業に土地を売って、金を作ることができなくなる。加工しかしていないので、外国企業も直ぐに撤退できるのが中国の特徴で、人件費が上がると他の国に移動することになる。
中国の不良債権額が100兆円にもなると米ファンドが試算している。中国のGDPは160兆円程度であり、この不良債権処理をするには、中国国内の資金だけでは無理がある。WTOにも加盟している中国は、市場経済を放棄もできない。もし、市場経済を放棄して、企業を全て国営化する判断をくだすと、諸外国企業や国家は二度と中国とは取引をしないし、経済制裁を中国に行う。中国の海外資産の凍結もする。このため、市場経済を止めることはできない。
1つの解決は、不良債権を持つ銀行を海外銀行に売却することである。このとき、日本のバブル崩壊時のことを思い出してほしい。海外の買収先は、資産の透明化を求めることになる。その透明化で問題が洗い出される。有力政治家の子弟の乱脈経営が明るみに出ることになる。そして、銀行や企業の自由性確保を要求する。その意味では中国国家が海外企業から監視されることになる。政経分離や法治国家化でしょうね。
多くの中国企業が海外企業の子会社になるため、今の韓国のように儲けのほとんどが海外に流れることになる。投資ファンドのカーライルの期待配当性向は30%以上ですから、かなり高率である。いくら働いても儲けは外国に行く構造になる。米国の新経済植民地ができる。
2つ目の解決は、国家が銀行の不良債権を買い取る。この資金を国家が国債を発行して、国民や外国に借りることになる。巨額の資金であるので、米国、日本やIMFなどの先進諸国や国際機関に頼るしかない。この時は、貸す条件として、中国国家に注文を出さなければならない。勿論、二度とこのようなことが起きないようにする仕組みだ。取りも直さず、民主化と政経分離と法治国家化になる。
こちらを中国が選択すれば、日本は中国改革のサポートに、日本を改革した竹中総務大臣とそのサポータ達を送り込めば、面白い。
アジア通貨危機時に、1を選択したのが韓国で、IMFの管理下で銀行のほとんどが外国ファンドの手に渡っている。2を選択したのが、マレーシアやインドネシアなどで、日本が資金を出している。金融改革を日本の指導で行った。現時点を考えると、IMFの管理は非常におかしい運営で、その国のためではなくて米国のファンドに寄与したように感じる。
日本のバブル崩壊時、GDPは500兆円で120兆円の不良債権でしたので、一部銀行を米ファンドに切り売りしただけで、済んだのが不幸中の幸いだったと思う。日本の経済力が不良債権の4倍以上あったから、軽く済んだ。中国の不良債権は100兆円とGDP160兆円に比べても、大きすぎる。このため、日本のように簡単には済まないようである。
中国は米ドルを大量に取得している。このドルを米国債としては3300億ドル程度を持っている。残りはペトロカサフスタンの買収やIBMのPC部門買収など世界で企業買収に使っている。日本企業もターゲットになっているので、気をつけてください。このドル資金を人民元に変えてくると、大量のドル売りになるためにドルの暴落も考えられることになる。このため、米国と日本が共同で中国の改革に乗り出し、米国の反発を抑えることも日本は考えることが必要でしょうね。
このような状況で、中国は報道を制限し始めている。特に海外への配信に報道管制を掛けてきた。とうとう、中国の危機的な状態が始まったような気がする。経済的に急な下降になると、一般的な国民の生活は非常に苦しくなる。この一般国民の暴動で政治も変わる。このような政策で、欧米日からも人権問題で中国の姿勢を批判されている。日本と欧米からの外圧が加わる状態になっている。