Wednesday, December 14, 2005

靖国問題8つの常識

■1.靖国問題の幕引き■
 10月17日、靖国神社の秋季例大祭に小泉首相が参拝し、
中国・韓国からの批判が再燃したが、従来と比べてだいぶトー
ンダウンしている。岡崎久彦元駐タイ大使は、参拝直後にこう
語っているが、事態はほぼ氏の予測通りに推移している。
 もう少し重く、公式参拝、または公式参拝に近い形でも、
日中関係、日韓関係に言葉による批判以上の実害はないと
いう点では同じだと思う。・・・
 言葉以上に何ができるかというと、若干の無害な交流の
停止くらいはあるかもしれないが、大衆デモは到底できな
いと思う。そうであるなら、今後は毎年、参拝しても日中
関係、日韓関係に言葉の批判以上の実害はなくなることが
確定するはずだ。小泉首相でなくても誰でも参拝できる状
況になるだろう。それが確定し、靖国問題の幕引きになれ
ば、小泉首相の功績になるだろう。[1]
 靖国参拝が中韓に実害を与えているわけではなく、単なる外
交カードとして使っているだけなので、カードが無力である事
が分かれば、この問題は自然に消滅する。しかし、外交問題と
してはそれで良いが、靖国問題の根底には日本国民が歴史と文
化の常識を喪失している、という重大な問題が横たわっている。
 この点を、超速シリーズ50万部突破の超人気予備校講師・
竹内睦泰氏が『日本・中国・韓国の歴史と問題点80』で説い
ている。氏がベストセラー受験参考書で見せた「超速」の語り
口と、「誇りのもてる日本史を伝えたい」という志が結合して、
およそ中韓との歴史・外交問題に関しては、この薄い一冊で用
が足りてしまうという本が出来上がった。[2]
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誇りのもてる日本史を伝えたい! そう思ってこの本を書きました。
『これだけは知っておきたい 日本・中国・韓国の歴史と問題点80』
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 本号では、特に靖国参拝に関する8つの常識を紹介したい。
■2.常識その1:靖国参拝批判は世界で3カ国のみ■
 第一の常識は、靖国参拝を公式に非難している国は、中国、
韓国、北朝鮮の「反日3兄弟」だけだという点である。
 実際のところ、「靖国神社参拝」に反対しているのは、
世界でたった3カ国にすぎません。マスコミの「諸外国の
反発」という書き方が国民を惑わせているのです。
 外国の要人が靖国神社に参拝するのは珍しいことではあ
りません。それどころかむしろその数は多いといえます。
「A級戦犯」合祀後に、靖国神社に参拝した要人がいる国
は、世界で30数カ国に上ります。ロシアのエリツィン元
大統領(1990年参拝)をはじめとして、チベットのダライ
・ラマ14世など、異教徒の方も参拝しています。
「アジア諸国は靖国神社参拝に反対」と報道されています
が、2005年にインドネシアのユドヨノ大統領は「国のため
に戦った兵士をお参りするのは当然のことだと思う」と安
倍晋三自民党元幹事長に語っています。[2,p36]
 このユドヨノ大統領の言葉が国際常識である。
■3.常識その2:国際社会は「A級戦犯」にはこだわっていない■
 中韓の批判は靖国神社には「A級戦犯」が祀られている、と
いう所にあるが、今時「A級戦犯」を云々しているのも中韓だ
けである。
「A級戦犯」の一人に重光葵がいる。東条内閣で外務大臣を務
めたが、それ以前は駐ソ大使として張鼓峰事件の処理などを巡っ
てソ連外務省と激しいやりとりをし、東京裁判ではソ連が重光
の起訴を最も強硬に要求したと言われている。
 東京裁判で禁固7年の判決を受けて服役。昭和26(1951)年
に出獄後、昭和29(1954)年からの第一次鳩山一郎内閣では外
務大臣を務め、昭和31(1956)年の日本の国連加盟の際には、
外相として国連総会での演説も行っている。
「A級戦犯」が服役後、外務大臣となり、国連で演説した、と
いう一事を持ってしても、国際社会が「A級戦犯」などにこだ
わっていない事は明らかである。
 そもそも近代の法理論から言えば、「刑は執行した時点で終
了。死者を裁く法はない!」のである。
■4.常識その3:法なくして裁かれた「A級戦犯」■
「A級戦犯」というと本当の犯罪者のように考えてしまうが、
これは誤りである。A級とは「平和に関する罪」ということで、
通常の捕虜虐待、民間人殺害などの戦争犯罪とは異なる。しか
し、平和の罪とは何かを定めた法律などは、なかった。[a]
 近代法には「どのような行為が犯罪であり、その犯罪に
どのような刑罰が加えられるかはあらかじめ法律によって
明確に定められていなければならない」という「罪刑法定
主義」と呼ばれる原則があります。
 たとえば、スピード制限表示のない道路をあなたが走ってい
ていて、急に警察官に止められ、罰金を取られたとする。「こ
の道路はスピード制限がないじゃないか」と抗議をして、警察
官が「制限はないが、今のスピードはあきらかに交通安全を脅
かすもので、罰金ものだ」と答えたら、誰でもおかしいと思う
だろう。スピード違反で罰金をとるには、制限速度は50キロ
で、10キロ超過したら5万円の罰金、などという法があらか
じめなければならない、というのが「罪刑法定主義」である。
 ちなみにサンフランシスコ講和会議でメキシコ代表は次のよ
うに東京裁判そのものに同意しない旨の発言を行っている。[b]
 われわれは、できることなら、本条項[講和条約第11条]
が、連合国の戦争犯罪裁判の結果を正当化しつづけること
を避けたかった。あの裁判の結果は、法の諸原則と必ずし
も調和せず、特に法なければ罪なく、法なければ罰なしと
いう近代文明の最も重要な原則、世界の全文明諸国の刑法
典に採用されている原則と調和しないと、われわれは信ず
る。
■5.常識その4:国内法上、「A級戦犯」は存在しない■
 さらに日本の国内法上は、「戦犯」は存在しない。
 一部のマスコミは、1951年のサンフランシスコ平和条約
において日本が「東京裁判」を認めたかのように報道して
いるようですが、これは間違っています。[2,p32]
 条約第11条には東京裁判や連合国での「戦争犯罪法廷の裁
判を受諾し、・・・これらの法廷が課した刑を執行するものと
する」とある。
 しかしこの「裁判を受諾し」というのは日本語原文のみの表
現であり、英語原文では受諾したのは"Judgements"、すなわち
「判決」である。仏語、スペイン語原文でも同様の表現になっ
ている。これは日本政府が判決にしたがって、刑の執行を継続
することであり、「裁判」全体、すなわちそのプロセスや判決
理由についてまで同意したという意味ではない。[b]
 昭和27年4月28日に平和条約が発効し、日本が独立を恢
復すると、昭和30年にかけて、遺族援護法が成立し、敵国の
戦争裁判で刑死、獄死した人々の遺族にも、遺族年金や弔慰金
が支給されるようになった。
 その中心となったのは、堤テルヨという社会党の衆議院議員
であった。堤議員は衆議院厚生委員会で「その英霊は靖国神社
の中にさえも入れてもらえない」と遺族の嘆きを訴えた。堤議
員の活躍が大きく貢献して、「占領中の敵国による軍事裁判で
有罪と判決された人も、国内法的には罪人と見なさない」、と
いう判断基準を含んだ法改正が与野党をあげて全会一致で可決
された。[c]
 本年11月25日にも、民主党の野田佳彦国対委員長が質問
主意書で、
 極東国際軍事裁判に言及したサンフランシスコ講和条約
第十一条ならびにそれに基づいて行われた衆参合わせ四回
に及ぶ国会決議と関係諸国の対応によって、A級・B級
・C級すべての「戦犯」の名誉は法的に回復されている。
すなわち、「A級戦犯」と呼ばれた人たちは戦争犯罪人で
はないのであって、戦争犯罪人が合祀されていることを理
由に内閣総理大臣の靖国神社参拝に反対する論理はすでに
破綻していると解釈できる。
と述べ、これに対する政府答弁書でも「国内法上は戦犯は存在
しない」と確認されている。[d]
■6.常識その5:分祀しても、神様は増えるだけ■
 中韓の批判を避けるために、「A級戦犯」を分祀(ぶんし)
すべきだ、という主張があるが、これは神道を理解していない
説だ。
 祭神が新しい神社に祀られたとしても、元の神社にもしっ
かりと残るのが分祀。分祀すればするほど、東条英機が神
様として増幅していきます。つまり、近隣諸国に配慮しよ
うとしても、逆の結果を引き起こすことにしかならないわ
けです。
 ちなみに、完全に引っ越すことは遷座(せんざ)といい
ますが、これもあくまで靖国神社が引っ越すだけで祭神は
変わりません。第一、政教分離を唱えるのなら、政治家が
宗教法人に意見をするべきではないでしょう。これは単な
る政治の宗教介入であって、分祀を唱えている政治家こそ
が、政教分離に反していることになります。[2,p48]
■7.常識その6:靖国参拝は政教分離の原則に抵触しない■
 政教分離の原則から、首相の靖国参拝に反対する議論がある。
ベストセラーになった『靖国問題』の著者・東京大学教授
の高橋哲哉氏は「政経分離の原則からいえば、A級戦犯に
関係なく首相が靖国に参拝することが問題だと思います」
と語っているが、アメリカの作った憲法に込められた「幻
想」である政教分離をもって、日本人が日本の神社に参拝
するのを否定するのはおかしいと思います。
 アメリカ大統領は聖書に手を置いて宣誓します。英国女
王はイギリス国教会の長です。政教分離を唱えるのなら、
まずは憲法を押しつけたアメリカ・イギリスに疑問をなげ
かけるべきでしょう。[2,p23]
 ちなみに以下に述べる「無宗教の国立追悼施設の建立」に関
して、次のような注釈がある。
 よくモデルとしてアメリカのアーリントン墓地が挙げら
れるが、これは無宗教ではなく、多宗教である。キリスト
教、ユダヤ教、仏教、イスラム教、さらには天理教や金光
教、生長の家の墓まである。[2,p46]
 アーリントン国立墓地は約6万人の戦死軍人と無名戦死者お
よび政府高官が埋葬されており、その入り口には、
Our Nations Most Sacrid Shrine
我が国でもっとも崇高な廟
 とある。まさしく靖国神社と同じである。そこにアメリカ大
統領が参拝しても、「政教分離の原則に反する」などとは誰も
言わない。これが国際常識である。
■8.常識その7:国立追悼施設でも「A級戦犯」を除外できない■

 朝日新聞の社説が、「無宗教の国立追悼施設の建立」を
主張しています。
 この提案は、靖国問題反対派が唱える対応策の一つ。靖
国神社をつくって、「A級戦犯以外の英霊」を追悼すべき
だという論です。
 しかし、政府が国立の追悼施設を作って「A級戦犯」をはず
すためには、すでに述べた「国内法的には罪人と見なさない」
という法律が障害になる。罪人でないので、他の戦死者と分け
て、追悼からはずす事はできない。
 追悼からはずすためには、やはり「A級戦犯」は罪人である、
という法を今更ながら、作りなおさねばならない。4千万人も
の署名を集め、国会が全会一致で作った法律を、中韓が批判す
るから、という理由だけで変更するのだろうか? それでは民
主政治とは言えないだろう。
 さらに、それは国際法的にも批判されている東京裁判を、我
が国が認めることになるのである。
■9.常識その8:靖国には全世界の戦没者を祀る鎮霊社がある■

 靖国の境内には「鎮霊社」という神社があります。
 あまり知られていませんが、ここでは国籍を問わず全世
界のすべての戦没者を祀っています。つまり靖国神社とは、
戦争によって命を奪われた人すべての魂を鎮めるために建
てられた社なのです。
 戦争の悲惨さを知り、そして戦争の悲しみを一番知って
いるからこそ、靖国神社は敷地内に鎮霊社を祀っています。
これこそ、平和を希求している靖国神社の懐の深さであり、
そこでは、死ねばみな「神」とされます。
 その「神」に「A級」だの「B級」だのという、人間世
界での基準をあてはめること自体がおかしいのです。

 こういう美しい日本人の死生観を守るためにも、中韓の「死
者に鞭打つ」文化の干渉を許してはならないのである。

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